岡崎 鞍馬 (おかざき・くらま)
夏休みを目前にした、ある夜。
お気に入りのディパック……いつものよりは大きく、リュックと呼んでもよい……にあれこれと詰め込んで、荷造りが完成した。
昼間、あれこれと買い付けて帰ってきた時に比べると、なぜか半分以下の体積になっている。
よく見ると、ゴミ箱の周りには各種の空き箱が綺麗に解体されて山積みされている。あれこれ種類別に小分けにして、余分な包装は取って、ディパックの中に整然と詰め込まれているのだ。おそらくベテランの登山家から見ても拍手ものの手際だろう。……もっとも、普通の人に比べて、鞍馬が必要とするものは相対的に少ないのだが。
入ってきたのは、鞍馬の祖父。
鞍馬は祖父母と共に暮らしているのだ。彼らは鞍馬の父親の両親に当たる。
わずかな沈黙。
ほうっ、とため息一つ。
立ち上がって出ていこうとする祖父。
明後日は出発の日……。
旅に行く鞍馬の身を案じる、鞍馬の祖父。
旅と言うにはあまりに特異なその行為に、鞍馬を駆り立てるものとは……。
2回目の1999年の夏、夏休みに入って早々に、鞍馬は長い旅に出ます。彼はその旅で何を見つけてくるのでしょうか。
このEPは、その旅に出るまでのとある1シーンを描写したものです。
EP『中野決戦』の一週間後で、EP『決心』『鞍馬のお買い物』と同じ日の話です。
1999(2nd)年7月18日(日)の夜。