エピソード059『歳の差なんて』


目次


エピソード059『歳の差なんて』

登場人物

桜居 珠希 (さくらい・たまき)
 
放課後首狩り魔。その実体は、ふつーの女子高生。終末の住人。
岡崎 鞍馬 (おかざき・くらま)
 
生まれながらに無敵の肉体を持つ小学生。不登校。終末の住人。

本編

4月初頭の、ようやく暖かくなってきたうららかな春の日の喫茶「月影」。

SE
カラカラン
珠希
「いらっしゃいま……あら、ひっさしぶりー」
鞍馬
「こんにちは」

相変わらず控えめに喫茶店に入ってくる小学生と、いつもの如く元気に愛想を振りまくバイトの女子高生。ちなみに、二人とも終末の住人である。

珠希
「どうしてんのよ、最近は。それにしても、鞍馬くんてば、薄着よねー」
鞍馬
「走ると、暑くなるから……」
珠希
「何にする?」
鞍馬
「……あ……じゃ、アイスコーヒー」
珠希
「なにそれ? おなか壊すわよ〜?」
鞍馬
「外は、もう暑いくらいだよ」
珠希
「そうなの?(汗)」

などと言いながら店長である直人にテキパキと注文を伝える。その際も会話をほとんど途切れさせることはなく、バイト初期の珠希と比べてその進歩に感心する鞍馬。昔は会話に没頭して直人に注意されることもしばしばだったのだ。

鞍馬
「……ねぇ、珠希ちゃん」
珠希
「何よ?」
鞍馬
「中学校の教科書、持ってる? 参考書とか……」
珠希
「ちゅうがっこう? のきょうかしょ? んー、持ってるのもあるけど大概捨てちゃってるかもねー。……何するのよ、そんなの?」
鞍馬
「勉強」
珠希
「べんきょう?! もう中学生のをやるの?」
鞍馬
「うん。どこにも行かないときには、家でやってるから」
珠希
「偉いわねぇ。何でまたそんな殊勝なことしてんのよ」
鞍馬
「……もう新学期だよね……」
珠希
(……はた)

一瞬の間があって。
 しかし、意味の解る者にとっては、それは現実を直視させられる永遠に等しい瞬間であった(笑)。

珠希
「……今年、"何回目"だっけ(汗)」
鞍馬
「……三回目」
珠希
「鞍馬くん、小5だっけ?」
鞍馬
「てことになってるけど、本当は……」

沈黙。

珠希
「……あ、あははは、私も人のこと言えないんだったわ」(ひきつり笑い)
鞍馬
「最近背が伸びちゃったから、学校に行くと目立ってるような気がしてさ……」
珠希
「そう? 小柄だから全然そうは思わないけど……って、本当のトシ考えたら、小さいままってのもいやか」
鞍馬
「うん……それはある」
珠希
「私もねぇ……最近同級生のノリがきつくなっちゃってきちゃってさぁ……」(以下延々と愚痴)
鞍馬
「…………(汗)」

お年頃の住人たちの苦悩はまだまだ続く(笑)

解説

『災厄』の時間ループの影響を唯一受けない、終末の住人たち。
 しかしそれは、世界の中で自分たちだけが歳をとると言うことであり。
 1年単位の生活を送っている、特に若い住人たちには、とても耐え難いことであるのです。
 ……シリアスなシチュエーションのはずなのに、どうしてもコメディになるなぁ(笑)。

時系列

1999(3rd)年4月初頭の春休みのこと。



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