- 厳侠児(げん・きょうじ)
- 終末の住人。経歴、行動に謎が多い。
- 異能は地面にできた影の上を高速で移動する"疾影"
- 加賀清彦(かが・きよひこ)
- 終末の住人。侠児の旧知の人物?
結界を張って駅の改札を跳び越える。
駅を出て……
- 侠児
- 「(……結界!?)」
自分の張る以外の結界を遠方に察知する。
- 侠児
- 「(……この……独特の張り方……癖……)」
そして場所を考慮に入れ。
- 侠児
- 「(やはり加賀さんだ……)」
嫌な予感がする。
- 侠児
- 「(……急いだほうがいいな)」
自分の結界を解く。
そのとき……
- SE
- バュウウウゥゥゥゥゥゥ……
- 侠児
- 「!!!」
常人では感じることができない衝撃波が侠児の身体を撃った。
- 侠児
- 「戦闘体制!!?」
侠児が感じた結界の波形が強まっている。
- 侠児
- 「(敵がいるのか!? ……確か加賀さんの対は既に……まさか堕とし子!? ……とにかく急いだ……)」
通りに目をむける。
- 侠児
- 「!」
現在の時刻は12時半。太陽が南中高度に上がりはじめている。今は日中で最も影が小さくなってゆく時間だった。
通行人や建物が地面に落とす影は点々としている。
- 侠児
- 「しまったっっ……」
"疾影"は使えない。侠児は駆け出した。
- 侠児
- 「間に合ってくれっ!」
- SE
- ボヒュュゥゥォオォォォ……
堕とし子の死体が大量の塵となり中に舞い上がる。それが空気に溶けて消えてゆく。
- 加賀
- 「……ぅ」
住人と思しき人間が一人、地面に寝転がったまま苦痛に呻いた。辺りにはガラスの破片やビルの瓦礫が散っていた。
- 加賀
- 「……」
誰かがこの空間に侵入したのを感じた。だが、加賀にはそれに備えて動くための力はもう無い。
足音が聞こえ始める。
- 侠児
- 「加賀さんっ!」
侠児が駆け寄って来る。
- 侠児
- 「しっかり!」
- 加賀
- 「……ぅ…………だ…れ……だ…………」
加賀は侠児を知らない。だが侠児は加賀を知っている。
侠児が"旅立つ"前、加賀は侠児に言った。
- 加賀
- 「いよいよ行くのか」
- 侠児
- 「はい」
- 加賀
- 「お前の行く末を占ったが……」
加賀は口を重くした。
- 侠児
- 「悪い結果でも?」
- 加賀
- 「旅立ちの前に言うには相応しいことではないが……」
- 侠児
- 「どうぞ(苦笑)」
- 加賀
- 「『力の後退』『孤独な戦い』『人を頼れば仇を成す』」
- 侠児
- 「『敗北』でなければ十分ですよ(苦笑)」
- 加賀
- 「(苦笑) 諦めるなよ」
- 侠児
- 「(骨折3ヶ所、裂傷8ヶ所、全身打撲、出血多量…………だめだ、手遅れなのか……)」
- 加賀
- 「ぅ……ぁ……弓子……」
命の散り際に想い人の名が口からこぼれる。
- 侠児
- 「加賀さんっっ! しっかりっ!」
加賀の目から滴が流れ落ちた。それは如何なる無念の一筋か。
加賀は息をひきとった。
- 侠児
- 「………………………………………………………………」
- SE
- ドゴッッッ
侠児の拳が大地を打つ。
- 侠児
- 「(……これで3人目だ)」
舞い消えてゆく灰と、場に残った独特の"匂い"から侠児は、加賀の敵を察した。
- 侠児
- 「(……そうか……そういうことか……)」
ゆっくりと立ち上がる。
- 侠児
- 「(筋書を変えても、こっちの都合良くは動かさない……とでも言うかっ!)」
竹刀袋の上から"天降太刀"を握り締める。
- 侠児
- 「(……俺の考えが甘かったのか)」
奥歯を噛む。
- 侠児
- 「("災厄"が、俺を狙うだけでなく、俺が接触しようとする住人にまで手を回すのなら……)」
天を仰ぎ、睨む。
- 侠児
- 「作戦は変更だ! 俺一人で止めて見せるっっ!! 俺一人で貴様ら堕とし子と司を虱潰しだ!!!」
侠児が叫ぶ。
その言葉は、あまりに無謀な宣戦の布告。
3rd.1999.4.下旬
これ以後、侠児は誰を頼りにすることもなく、唯一人、災厄に立ち向かいます。
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