エピソード065『侠児、怒る!』


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エピソード065『侠児、怒る!』

登場人物

厳侠児(げん・きょうじ)
終末の住人。経歴、行動に謎が多い。
異能は地面にできた影の上を高速で移動する"疾影"
加賀清彦(かが・きよひこ)
終末の住人。侠児の旧知の人物?

都内某所

結界を張って駅の改札を跳び越える。
 駅を出て……

侠児
「(……結界!?)」

自分の張る以外の結界を遠方に察知する。

侠児
「(……この……独特の張り方……癖……)」

そして場所を考慮に入れ。

侠児
「(やはり加賀さんだ……)」

嫌な予感がする。

侠児
「(……急いだほうがいいな)」

自分の結界を解く。
 そのとき……

SE
バュウウウゥゥゥゥゥゥ……
侠児
「!!!」

常人では感じることができない衝撃波が侠児の身体を撃った。

侠児
「戦闘体制!!?」

侠児が感じた結界の波形が強まっている。

侠児
「(敵がいるのか!? ……確か加賀さんの対は既に……まさか堕とし子!? ……とにかく急いだ……)」

通りに目をむける。

侠児
「!」

現在の時刻は12時半。太陽が南中高度に上がりはじめている。今は日中で最も影が小さくなってゆく時間だった。
 通行人や建物が地面に落とす影は点々としている。

侠児
「しまったっっ……」

"疾影"は使えない。侠児は駆け出した。

侠児
「間に合ってくれっ!」

相打ち

SE
ボヒュュゥゥォオォォォ……

堕とし子の死体が大量の塵となり中に舞い上がる。それが空気に溶けて消えてゆく。

加賀
「……ぅ」

住人と思しき人間が一人、地面に寝転がったまま苦痛に呻いた。辺りにはガラスの破片やビルの瓦礫が散っていた。

加賀
「……」

誰かがこの空間に侵入したのを感じた。だが、加賀にはそれに備えて動くための力はもう無い。
 足音が聞こえ始める。

侠児
「加賀さんっ!」

侠児が駆け寄って来る。

侠児
「しっかり!」
加賀
「……ぅ…………だ…れ……だ…………」

加賀は侠児を知らない。だが侠児は加賀を知っている。

手向け

侠児が"旅立つ"前、加賀は侠児に言った。

加賀
「いよいよ行くのか」
侠児
「はい」
加賀
「お前の行く末を占ったが……」

加賀は口を重くした。

侠児
「悪い結果でも?」
加賀
「旅立ちの前に言うには相応しいことではないが……」
侠児
「どうぞ(苦笑)」
加賀
「『力の後退』『孤独な戦い』『人を頼れば仇を成す』」
侠児
「『敗北』でなければ十分ですよ(苦笑)」
加賀
「(苦笑) 諦めるなよ」

宣戦布告

侠児
「(骨折3ヶ所、裂傷8ヶ所、全身打撲、出血多量…………だめだ、手遅れなのか……)」
加賀
「ぅ……ぁ……弓子……」

命の散り際に想い人の名が口からこぼれる。

侠児
「加賀さんっっ! しっかりっ!」

加賀の目から滴が流れ落ちた。それは如何なる無念の一筋か。
 
 加賀は息をひきとった。

侠児
「………………………………………………………………」
SE
ドゴッッッ

侠児の拳が大地を打つ。

侠児
「(……これで3人目だ)」

舞い消えてゆく灰と、場に残った独特の"匂い"から侠児は、加賀の敵を察した。

侠児
「(……そうか……そういうことか……)」

ゆっくりと立ち上がる。

侠児
「(筋書を変えても、こっちの都合良くは動かさない……とでも言うかっ!)」

竹刀袋の上から"天降太刀"を握り締める。

侠児
「(……俺の考えが甘かったのか)」

奥歯を噛む。

侠児
「("災厄"が、俺を狙うだけでなく、俺が接触しようとする住人にまで手を回すのなら……)」

天を仰ぎ、睨む。

侠児
「作戦は変更だ! 俺一人で止めて見せるっっ!! 俺一人で貴様ら堕とし子と司を虱潰しだ!!!」

侠児が叫ぶ。
 
 その言葉は、あまりに無謀な宣戦の布告。

時系列

3rd.1999.4.下旬

解説

これ以後、侠児は誰を頼りにすることもなく、唯一人、災厄に立ち向かいます。



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